「……光彦ッ!」
 悲鳴に近い高い声を上げ、嵐がビクリと腰を弾ませた。
「嵐……。半勃ちしてるぞ」
 耳朶を軽く噛み、わざとらしく吐息を吹きかけ、光彦がそう囁いた。
 自らの厚い胸板で嵐のあばらを押しつぶすようにして上半身を壁に固定し、光彦は、先刻の攻防戦で疲れ弱っている両手首を、安々とその頭上に片手で縫いとめた。
 首筋を食みながら、布地越しに嵐の下腹部を光彦の手が撫で摩る。その、形を確かめるような仕草に、気が違いそうな激しい羞恥に苛まれ、嵐の涙腺は大破寸前であった。視線を落とせば、否が応でも淫猥にうごめく光彦の指先が視界に入る。

くそ、くそ、くそ――ッ!

 勢い良く顔を上げた拍子に、力でねじ伏せられた悔しさと、友と信じ疑わなかった光彦に蹂躙される悔しさ――そして、その攻め立てに素直に硬度を増す自身への悔しさが、涙となって嵐の頬を伝った。

「……嵐。狡ぃぞ、ソレ」
 思いがけない嵐の涙に驚き、一瞬、臆したように光彦の指先がピタリと動きを止めた。
 だが、光彦にとって今こそ積年の夢を叶える、千載一遇の好機なのである。そうそう簡単に諦めてたまるか、とばかりに、嵐の頬に流れる滴を舌先で荒々しく舐め取った。

 嵐のバミューダパンツの前を起用にくつろげると、光彦は躊躇うことなく手を中へと滑り込ませた。薄い繁みをくすぐるように弄んだ後、さらに深く、奥へと手のひらを優しく這わせる。
「ぅうわッ!」
 かつて経験の無い生々しい感触に嵐はわななき、目を見開いた。
 嵐の肩口に軽く歯を立てていた光彦は、顔を上げ、
「感じるか?」
 と、鋭敏に反応を返す嵐の表情を窺い見た。残された理性で辛うじて首を左右に振るが――所詮、嵐とて健康な十六歳男子高校生である。芯は硬く張り詰め、さらに強い刺激を求めていた。
 その変化に気を良くした光彦は、嵐の拘束を解いた。

 ゆっくりと、熱を煽り快感を促していく。嵐の息遣いが弾み、細い腰が僅かに壁から浮いた。光彦が嵐の下腹部に滾る自身を押し付けると、逃げるように弱々しく身を捩る。しかし、今や抗う気力も薄れ、嵐は双腕をダラリと垂らし脱力した。
 ガクガクと痙攣する脚を背中で支え、嵐は眉間に皺を寄せながら、ときおり首を振り立てる。光彦は、屈辱に耐えるその表情を恍惚と見て、嵐の前に跪くように両膝立ちをした。支えを失った途端、嵐は崩れるように床にへたり込んだ。

「……う、ぅ……」
 嵐の中心を揉みしだき、同時に白いTシャツの上から胸元の突起を舐めると、嵐の伸びやかな肢体が一層大きく跳ねた。唾液が布地を濡らし、薄桃色の箇所が薄っすらと透けて見える。転がすように執拗に舌を這わせ、充分に尖りきった頃合い見計らって光彦が歯を立てた。
「……い、てぇ――」
「なぁ、気持ちいいだろ?男でもここ、感じるんだぜ?」
 興奮と羞恥に火照る嵐の顔を愛しむように眺めている光彦に、嵐が鋭い視線を向けた。
「光彦…おま、え…慣れてるんだな…」
 薮蛇とばかりに「そうでもねぇよ」と、肩を竦めて笑って見せた後――光彦は嵐の両腿の間にゆっくりと顔を埋めた。






「良かったろ?」と、光彦。

 細かく呼吸をつきながら、半ば放心状態の嵐の唇を浅く光彦が啄ばむ。
「可哀想だよなぁ、コレ。可哀想だと思うだろ?」
 光彦が、半パンを突き上げるほど隆起している己の股間を指差すと、
「……知るかよ」
 嵐は冷淡にもそう言い捨てた。
「次でいいから、な?」
 返事は無い。

 ぐったりと壁に身を預けている嵐の顔を、邪気の無い眼差しで覗き込むと、光彦は性懲りも無く。

「マイケルと、俺。どっちが好……」
「地獄へ陥ちろ……ッ!」

 嵐の鉄拳が光彦の頬に炸裂したのは、最早云うまでもない事実であった。

---end---
寸止め御免。
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